パロディの森

※パロディの元ネタ集です

 

 

『安くて美味しいワインなんかこわくない6』から

・・・夢になるといけねえ

 

《古典落語》ー《芝浜》から

古典落語の《芝浜》という噺は・・・酒ばかり飲んで仕事を休んでいる魚屋・勝五郎は、今日こそ仕事に行かせようと決意した女房に商売道具をきちんと用意された上で起こされ、何日かぶりで渋々出かける。ところが女房が時刻を間違えたせいで早く来すぎ、魚河岸はまだ開いていない。帰るのも面倒なので浜に出て一服つけることにした。その時海から財布を拾う。かなり重い。家に帰って女房と数えると八十ニ両もある。勝五郎は仲間を集めて飲みまくり酔って寝てしまった。

翌朝、前日と同じように女房は早く仕事に行け、と勝五郎を起こす。拾った金の話をしても勝五郎が夢でもみたんじゃないか、と女房は譲らない。最後には納得した勝五郎はそんな夢を見るようではおしまいだ、と反省し。酒を断ち商売に励む。

三年後には表通りに店を出し人を使うようにまでなった。その大晦日。

女房は八十ニ両入った財布を出して「夢じゃなかったんだ」と告げる。
三年前に勝五郎が酔い潰れて寝たあと、大家に相談に行き事情を話すと、お上にばれて罪に問われたらどうする、と意見され、八十ニ両は奉行所に届け出たのだと。
落とし主が出ず金は後に戻ってきたが、今まで黙っていた。今のあんたなら大丈夫と思って全て話した。

勝五郎は涙を流して女房に礼を言う。
良い酒を用意してある。今日は飲むか?と女房に促された勝五郎は最初その気になるが。
「よそう。また夢になるといけねえ」

 

古典落語の《芝浜》という噺は落語の人情噺の中でも最も有名な噺でしょう。当然歴代の名人の名演が多くなかなか絞りきれないんですが。今回は二つだけ。

 

一つは《三代目桂三木助》の《芝浜》

 

勝五郎が浜に出て一服つける場面を再現します。

ただいまと違いやすその時分ですからあの火口(ほくち)というやつですな。石を「カッカッカッキャッ」とこすりまして火(し)を出してそいつをこう火口(ほくち)へ火(し)を着けます。

 

一服つけている間に日の出になりパンパンと柏手をしたあとの独白を再現します。

どうっでぃ。えぇー・・・はー海ってやつぁ広(しろ)いんだねぇ。長年おれぁこの浜(はめ)エ来るんだけれどむこう岸(がし)の見えた(めえた)ことぁねえんだからねえ。っぽど広(しろ)いんだよ海ってやつぁ。

 

もうたまりませんな。ザ江戸弁。毎度のことですが、文字で読んだってこの臨場感は伝わりませんね。芝浜の三木助と評される所以はCD を買うとかYouTubeで試聴する等で確認してみて下さい。

三代目桂三木助
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二つ目は《立川流家元立川談志》の《芝浜》

多くは語りません。ともかく聴いて下さい、観てください、涙して下さい。
こんなに泣ける落語、他にちょっとありません。

立川談志
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『ローヌなんかこわくない2』から・・・ああ、もう秋だ。___それにしても、何故、冬に食べられないざる蕎麦を惜しむのか、ワイン兇徒はうみゃいワインの発見を志す者ではないのか、11月第三木曜日の喧騒から遠く離れて。

《アルチュール・ランボオ-小林秀雄訳『地獄の季節』》-《別れ》から・・・もう秋か。―それにしても、何故に永遠の太陽を惜しむのか、俺たちはきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、季節の上に死滅する人々からは遠く離れて。

地獄の季節 (岩波文庫)
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『山梨県甲州市勝沼町なんかこわくない』から・・・私はワインを飲んだ。一ト仕事を終えてゴクゴクしている人がよくそう思うように、うみゃいと私は思った

《三島由紀夫》-《金閣寺》から・・・私は煙草を呑んだ。一ト仕事を終えて一服している人がよくそう思うように、生きようと私は思った

三島由紀夫 金閣寺
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『ワイングラスなんかこわくない』から・・・「そっくりだ。どっちもドイツだな」「行方不明だった番頭さんが実は行ってたとこだな」

《五代目古今亭志ん生》-《寝床》から・・・これの説明に志ん生の寝床全編を載せると途方もない長さになってしまうので、かいつまんで説明しますと古典落語の《寝床》という噺は(義太夫に凝った旦那が自分の長屋に住んでる店子や奉公人に義太夫を聞かせる会というものを開く。これがこの世のものとは思えないすごいもので聴いたら病気になる代物でみんな凝りてる。なんだかんだ言い訳をして行けないと断る。怒った旦那が、店子に明日出てけと言い渡す。仕方なく参加することする。会が始まる前に過去の旦那の義太夫の犠牲になった人たちの噂話が始まる。急に義太夫を聞かせたくなった旦那が奉公人を集めろと無茶を言い出し、そんなことはできない、と番頭さんが一人犠牲になる。番頭さん、最初は我慢していたが、命には代えられないと庭に逃げ出し蔵に入り込む。構わず旦那は蔵の窓から義太夫を語りこむ。番頭さんは次の日、書き置きを置いてドイツに逃げちゃった)というお話。

※たいていの《寝床》はこの先の義太夫の会のドタバタが描かれるのですが、志ん生の《寝床》はこの番頭さんのエピソードで急にエンディングになる。終わり方の鮮やかさが際立つ名演です。しかしこんなことを書いても志ん生の《寝床》の面白さは十分の一も伝わらないですね。興味を持たれた方はCDを買うなりYou Tubeで視聴する等を強くお勧めします。

古今亭志ん生 名演大全集35
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『シャブリなんかこわくない』から・・・葡萄の樹の下には牡蠣の貝殻が埋まっている!これは信じていいことなんだよ。何故って、シャブリと生牡蠣があんなにも見事に合うなんて信じられないことじゃないか。

《梶井基次郎》-《桜の樹の下には》から・・・桜の樹の下には屍体が埋まっている!これは信じていいことなんだよ。何故って、桜の花があんなにも見事に咲くなんて信じられないことじゃないか。

梶井基次郎 檸檬
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『トスカーナなんかこわくない』から・・・俺の名はイタリアワインのキャンティ。へっへ。サン・コロンバーノの2010年

《太宰治》-《駆け込み訴え》から・・・私の名は、商人のユダ。へっへ。イスカリオテのユダ。

走れメロス(新潮文庫)
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