連作ワイン劇場「ワイン長屋の人々」第2話:思い込んだらブルネッロ

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015

 

バルディ・スーガ・ブルネッロ・デイ・モンタルチーノ・2015

 

その日お房は「セラーインしているワインをぜんぶ売る」などと、また言い出したおとっつァんに一発おみまいしたのだが、それだけでは気分が晴れなかった。

数日来、気になっているワインがあったのだ。お房は長屋の2軒挟んだ左隣の伴の意見を聞いてみようと思った。

変人ばかりのこの長屋の住人達だが、伴を比較的マトモだと誤解していたからだ。それが誤解だとなかなか気付けないお房であった。(注1)

 

「伴さん居る?」

「おや、お房ちゃん、いらっしゃい。なんだか良さげなもんを持ってるじゃねえか」

「ちょいとこいつを試してみてほしくてさ。年末に2本買ったうちの一本。最前、1本開けたんだけど、わかんなくなっちまって」

「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノかい。あいにくリーデルのブルネッロ・ディ・モンタルチーノ用のグラスはこの間(こないだ)割っちまったところでね」

 

お房は呆れ顔で

「そんなどマニアな御託いいってば。何にでも使えるなんちゃってボルドーグラス出してよ。ヨークマートで375円で買ったやつあるでしょ」

 

「よく覚えてんなあ、出してくるよ。あんたも飲むんだろ」

 

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015ボトル

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015エチケット

 

 

「熟成期間4年以上で最低2年は木樽で熟成のはずのブルネッロ・ディ・モンタルチーノが3,000円なんて変でしょう?、本当は熟成期間1年以上で最低6ヶ月木樽で熟成のロッソ・ディ・モンタルチーノにラベル貼り替えたんじゃないかって」

「随分説明的なセリフだな、不自然だぜ」

「フィクションなんて書き慣れないものに手を出した、この作者のていたらくが如実に出ている場面よね、ここ。笑っちまうわ。ブォーッホッホ」

「娘らしくないから、止したがいいぜその笑い方」

「ブォーッホッホって書けばウケると、思ってんのよこの作者。低脳の極みだわね。笑っちまうわ。ブォーッ・・ンゴムグ」

集中の妨げになるお房の口を塞いで、伴は考え続けていた。

 

悪くない。悪くはないんだがどうも引(し)っかかる・・・

「うーん」

 

伴の手を振り払ってお房は尋ねた。

「で、どうなのよ」

「ロッソ・ディ・モンタルチーノにブルネッロ・ディ・モンタルチーノのラベルを貼ったなんて、そんな無茶なもんじゃない。こいつは立派にブルネッロ・ディ・モンタルチーノだ。ただな・・・」

「ただ?」

「このワインには何かがたらねえ」

「何かって?」

「そいつをさっきから考(かんげ)ェてるんだが」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015グラス

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015ディスク

 

伴の眼が光った。

「わかった」

「ナニナニ」

「このワインにはコシがねえ」

 

お房の眼も光った。

「コシね!」

「コシだ」

「わかるわ、コシよ!」

「わかるか?コシだ」(注2)

「でもコシを効かすにはどうしたらいい?」

「コンダラを引くしかあるまい」

 

2人の眼が光り同時に叫んだ

「コンダラよ!」

「コンダラだ!」

 

お房は深い溜息と共に静かに呟いた

「なんで気づかなかったんだろう、飲み手側の問題だったなんて」

「そいつがこのワインの盲点だったてえ訳だ」

 

後日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

伴の母校のグランドでコンダラ(注3)を引く、お房と伴の姿があったのであった。

 

【2022年2月26日公開 3000円台 消費税10%】

 

 

(注1)なぜならお房も相当な変わり者(もん)だったので。

 

(注2)この2人何をどうわかったんだか、ちっともわかりませんね、筆者(顧問)もよくわかりません、ワハハ。ワインを表現するのにコシがどうこう言う人間は伴とお房以外にはいませんのでお気を付け下さい。

 

(注3)出典「ゆけゆけ飛雄馬」。ちなみに正式名称「整地ローラー」は整地するための道具で体を鍛えるためのものではありません。ちなみにこれは押すものであり引くものではありません。それにしてもこんな古いギャグ、分からない人の方が今や圧倒的に多数派でしょうけど。

 

コンダラ
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第3話へ続く

 

 

モンタルチーノなんかこわくない

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015

バルディ・スーガ・ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ・2015

カルディコーヒーファームで年末に買っといたやつです。シャンパーニュをもう一本買ったら両方10%off。

それまで含めたら税込¥3,000!

KALDIってたまにこういうことやるから目が離せませんね。

 

ブドウ品種は「ブルネッロ」。別名「サンジョヴェーゼ・グロッソ」

「サンジョヴェーゼ・グロッソ」はキアンティ辺りが有名な「サンジョベーゼ」の亜種です。

 

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015ボトル

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015エチケット

 

生産地モンタルチーノ、ブドウ品種ブルネッロで作ったワイン、ですね。生産地とブドウ品種がそのままワイン名になっているというわかりやすい例ですね。

 

地図出してみます。

モンタルチーノはトスカーナ州のシエーナ県にあります。フィレンチェからだいぶ南に下った方向。モンテプルチャーノの左側のあたりになります。ざっくりですみません。

 

テイスティングコメント行きます。

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015グラス

バルディスーガブルネッロディモンタルチーノ2015ディスク

 

青みの取れた綺麗なルビー。コアに凝縮がありリムに向かって透明感が増してくる。粘性はかなり強くレッグスがゆっくり落ちて行く。カシス、ブルーベリー、コーヒーの樽香、少しタバコのニュアンス。

アタックはしっかりした酸味とスムーズなタンニン。酸味とタンニンのバランスが素晴らしい。後から甘みが出現。とても長い余韻に甘みが乗ってくるとでも言うか。

香りはまあまあ普通だけど味わいの複雑さが素晴らしいワインでした。

 

さて「サンジョベーゼ・グロッソ」が「サンジョベーゼ」の亜種だなんてことを聞くと、ああつまり本家じゃないのねとか思うでしょうけど。

その通りです。なのに偉そう(えてして高い)です。後から出てきたくせにね。

「サンジョベーゼ・グロッソ」に追い抜かれちゃった「サンジョベーゼ」には同情を禁じえません。笑えるワインブログの本家なのに無名な当ブログみたいですな溜池。

つくづく「俺って実はキース・ジャレットより前にいたんだぞ。影響を受けたんじゃない与えた方だ。ただやつの方がチケットが高いってだけ」って言いたくても言う機会のなかったジョン・コーツjr.  の忸怩たる思いを想う訳です。(注1)

ブルネッロ・ディ・モンタルチーノをほめそやすの急にヤになってきたな。キアンティのことでも書けばよかった!どうしてここまで書いてきてちゃぶ台ひっくり返すようなこと書いちゃうんだろう俺ってば。

ちゃぶ台ひっくり返す・・・だと?まるで次週の記事を予告しているような・・・次週「思い込んだらブルネッロ」乞うご期待。

 

 

 

(注1)ジョン・コーツjr.   がこんなことを想ったなんて何処にも記録に残ってませんのでご注意下さい。当ブログ嘘つきブログでございますえへん。

 

キース・ジャレット
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ジョン・コーツjr.
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【2022年2月19日公開 消費税10%】

 

 

 

 

 

ピエモンテなんかこわくない

ミケーレキャルロバルベーラダスティレオルメ2014

ミケーレ・キアルロ レ・オルメ バルベーラ・ダスティ[2014]

最近ブログを読み返してふとおもったのですが、ピエモンテ州のワインを取り上げたことなかったんだな。と、気付いてしまった。

イタリアワイン色々取り上げときながら、どうしたことか?

まあ理由は簡単ですよ

ピエモンテといえばネッビオーロ。ネッビオーロといえば

高い
したがって買う頻度低い
したがって絶対量すくない
したがってブログ記事にする機会を失する(注1)

ブドウ品種≒高い
なんてなネッビオーロ位でね

例えばカベルネソーヴィニヨン
5大シャトーやナパのやたら高いのからチリカベ(注2)までピンキリだし

例えばメルロー
帝王ペトリュスからチリメル(注3)までピンキリだし

例えばピノ・ノワール
神の領域DRCからチリピノ(注4)までピンキリだし

白ワインのシャルドネもムルソー(コシュ・デュリの・・・とか・・)なんて高いのからチリシャブ(注5)までピンキリですね。

大抵のワインは何万、何百万するのから1000円切るワインまで色々あるわけですわ。ところがネッビオーロだけは1000円切るワインがない。

普通ワインてのは品種で価格が変わるわけではなく、育った環境で(地域とか気候とか作り手)で大きく価格が変わるわけなんだが、ネッビオーロの奴だけはそもそも人種が違うと言いたいわけだ。

 

お生まれが違いますのよっ!オホホホ!

 

と言ってるわけだああむかつく。

でもねー、むかつくけど美味しいんですよバローロもバルバレスコも。なんとかしてネッビオーロ種で(安くて)美味しいのないものかと苦慮黙考呻吟熟慮していた顧問が、会社帰りの駅の途中のカルディコーヒーファーム西船橋店に立ち寄ったとおもいなせえ

ああっ!ミケーレ・キアルロだっ!ここのバローロは美味しかった!

バルベーラ・ダスティ?なんだそりゃ?(注6)

DOCGでないの!

あわててスマホで調べたら

バルベーラってブドウ品種なのね

高品質が認められて最近DOCからDOCGに昇格したのね

このさいピエモンテ州のワインならネッビオーロ以外でもいいから試してみようじゃないの

買いました。

ミケーレキャルロバルベーラダスティレオルメ2014ボトル

 

 

 

 

 

 

 

ミケーレキャルロバルベーラダスティレオルメ2014エチケット

 

 

 

 

 

 

 

 

地図貼り付けますね。

トリノの南東82km、アスティの南東28km
DOCG バルベーラ・ダスティ地域内にあるニッツァ周辺にはバルベーラ種の葡萄畑が広がり、ピエモンテでも有名な赤ワインの生産地。(出典イタリア政府観光局・ニッツァ・モンフェッラートとバルベーラ)とあって

作り手ミケーレキャルロはニッツァ・カレッリにあるので

だいたいこの地図のど真ん中あたりでしょう。

ミケーレキャルロバルベーラダスティレオルメ2014グラス

 

 

 

 

 

 

 

 

ミケーレキャルロバルベーラダスティレオルメ2014ディスク

 

 

 

 

 

 

 

青みの強いルビー色、いろいろなベリー系の香りと少しすみれの香り、ほのかな甘みとこなれたタンニン。若干のスパイシーさ。酸味は押さえめでよくできた白ワインのようなミネラル感がある。アフターに強く樽香。豊かなアルコール感。これだけいろいろな要素を盛り込んでいても、全体の印象はスマートなボディ。

いやあ美味しいっす。

ちなみに価格.comあたりで調べるとありますねえ1000円切ったワインが。そうこなくっちゃいけねえ、それでこそブドウ品種ってもんだ。ネッビオーロなんかに惑わせられない。バルベーラこそ赤ワインさ!

例えば仮に好きなほう飲んでいいよっってことになって、目の前にバローロリゼルヴァとバルベーラのグラス出されたら・・・・・・・

今までの顧問だったら迷わずバローロリゼルヴァに手を出していたろうけど、今日からの顧問は・・・・・・・・・

ミケーレキャルロ バローロ トルトニアーノリゼルヴァ2007
2015年4月に飲んだバローロ・リゼルヴァ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やっぱりバローロリゼルヴァ選ぶに決まってんじゃないの。

高いワインは美味しいのだ!どすこい。

あーあ、身も蓋もない。

 

 

 

(注1)まさかと思いますが飲んだワインすべて記事にしてると、お思いじゃないでしょうね。記事で取り上げた本数×10位は飲んでますので。(記事数×10じゃないよ)

(注2)チリのカベルネソーヴィニヨン

(注3)こんな言葉ありません、間違っても使わないように。

(注4)チリのピノ・ノワール

(注5)こんな言葉もありません、間違っても使わないように。

(注6)どんだけ無知なんだか

【2017年6月10日公開 消費税8%】

 

ミケーレ・キアルロ レ・オルメ バルベーラ・ダスティ
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